博多の名物焼肉店がバンコクへ上陸!
サワディカップ、バンコクナビです。
バンコクで焼肉を。と思ってもタイ式の焼肉店で出てくる牛肉はどこで食べてもまず硬い。
豚、鶏、シーフードの注文が無難である。そこで、ひと昔前までは“バンコクで焼肉を食べたかったら韓国料理屋に行く”のが在タイ日本人の間では当たり前。
しかし、ここ最近は日本式の焼肉店も無数にある中から自分の好みを選べるまでに増えました。
焼肉好きのナビはいろいろ行ってみては考えてみました。
「その違いは何なんだろう?」。
値段の高いところは日本から輸入された和牛で美味しいし、安いところはそれなり。まぁ当たり前の結果。
その食べ歩いた中で、どうしても強烈で忘れられないインパクトのあるお店が1軒あります。
日本では福岡でしか味わえない、とにかくその強烈さ。
福岡以外では大阪でも東京でも味わえない、初の海外支店「玄風館バンコク支店」。
ナビが案内していきたいと思います。
1.ファーストインパクト~門構え編~
まず驚かされるのが入口。
真っ赤なのれんで目立つが、立て付けが悪くて開けにくい。
やっとこさ入ると、誰もいない……。ぽつーんと立ちつくすナビ。
「あのー!ごめんくださーい」
と途中下車の旅で、片田舎の食堂に取材に来た気分。
無煙ロースターも随分古いのか、吸いが悪く有煙ロースターに(笑)。
床や壁に染み付いた焼肉の匂いと、くたびれた内装。
日本でチェーン展開して、その焼肉屋が海外進出、ここバンコクにもやってきた、と聞いていたけれど、何年も創業している老舗の雰囲気はいったい?
事情は後でゆっくり聞くとして、席に案内されメニューを拝見。
ここでも度肝を抜かれます。
2.セカンドインパクト~メニュー編~
だって、ツギハギでっせ!
日本人が経営してると聞いたけど、ラミネート加工の怪しい韓国語のメニューに、シールで継ぎ足したり、日本語書いたり消したり。
“肉さしみ”や、“鶏肉の人参づめスープ”は普通に“ユッケ”や“サムゲタン”でいいのに……。
“牛のみ”って“ミノ”やろー!とか、“HEARTS/ヘツ”って“ハツ”でしょ? と突っ込み満載のメニュー(これはこれで味がありますが、見やすいメニューに改訂中とのこと)。
1つも役に立たないメニューを見るより、壁に張ってある、おすすめのポスターの方がよっぽど分かりやすいかも。
3.サードインパクト~ママ編~
そこに登場しました、日本人オーナーKEIKOママ。
「ごめんねー!仕込みしてるからちょっと待って」
と内装から雰囲気から勝手にいろいろ想像してたより、随分若い雰囲気を醸し出しています。
聞くところによると、元々別の韓国式焼肉屋だったのを譲り受けてイチから立て直し、やっと去年(2008年)の7月、「玄風館」という看板をかかげることになったそう。 「冷房が効かない」「ボロい内装」「メニュー見てコレ、あはは」とずっと不満タラタラ言いながら説明しながら笑っていらっしゃる、凄い人です。
「さぁ何食べたい?」と聞かれもう1度メニューに目を通すも……「……。」返答に窮するナビ。
そんなわけで、ママのおススメを選んでもらうことに。
韓国料理屋さんだと当たり前の様に出てくる、この突き出し、なんと無料サービス。
キムチとカクテキとナムルと7種類の小鉢。
ママ自らの手で月に2回、1度に何十キロも漬け込むキムチは、そこらへんの既製品とはまったく違う本格的な味。
この突き出しで、特にキムチで店の実力がほとんど判ると言っても過言ではないほどで、 “突き出しと店の美味しさは比例する”という法則を信じて期待が高まります。
「これと飯だけで帰ったらご飯代だけですかぁ?」と聞く前に「うちは辛い焼肉で有名なの」とマイペースママ、パソコンでウエブサイトを見ながらいろいろとレクチャーを受けます。
4.フォースインパクト~玄風館の歴史編~
「玄風館」とは元祖1号店が博多にできてから、なんともうすぐ創業60年の歴史を持つ老舗の焼肉屋だそう。今は支店が7つあって、すべては兄弟家族、親戚がそれぞれ経営。
暖簾分けしても辛い秘伝のタレは門外不出で、そのレシピは守り抜かれているとか。
1号店は、その歴史を刻むかのようにキッタナイ焼肉屋で有名。庶民的でリーズナブルな値段だが、メニューもない焼肉屋だそう。だ、だからか……(笑)
そしてこの内装も空調の悪さもあえて「老舗の雰囲気を、ここバンコクに再現するための演出としたら……」最初からそんな訳はないと解っていても、このボロボロでもお客さんが絶え間なく入ってくるのが凄い。
この現代においても小奇麗な内装なんて、涼しいクーラーなんか無くても美味しい物を提供していれば自然と人が集まってくるもんなんだという自信の表れなのかも。そう信じ、料理を口にするまでは先入観を持たないよう、ノスタルジックな床や壁は見ないことに。(笑)
バンコクの日本スタイルの焼肉店は綺麗な内装で高級路線が多い中、ここ「玄風館」はいろんなところが独創的。韓国式の焼肉屋のいいところと日本式のそれがうまく融和されています。ゴチャまぜ、とも言えそうですが、ここはママの言葉を借りれば「日韓コラボ、フュージョン焼肉屋」。
5.フィフスインパクト~牛肉セット編~
お得だと言われて
牛肉セット(800バーツ)を頼んでみることに。
骨付きカルビから、噂の辛いモミダレにまぶされたハラミとカルビ、野菜も付いて、もっと育ち盛り、食べ盛りの頃に知り合っていたかったと後悔するほど豪快に盛られた大迫力のセットは……「これって4人前はある?」
真っ赤な辛いモミダレを、焼く前によく肉に絡ませて焼いたら、そのままツケダレは付けずに食べるのが本来の「玄風館スタイル」だそう。
“辛いことで有名”というから、すごく辛いものと覚悟していたけれど、実際は全然で見た目ほど辛くない。逆にコチュジャンやゴマの旨みから出る甘さの方が目立つくらい。
その代わり、タレが炭に落ちてはジューッと煙が上がるので、ちょっと吸力の衰えたロースターで吸いきれない余煙が目の前の視界をさえぎり、なかなか情緒があふれています。
その焦げた匂いも食欲を刺激します。
なんだこのなんか懐かしい感じ……。「そういえば昔どっかの焼肉屋で、上着に匂いがつかない様に黒いゴミ袋に入れて、ミカン箱に座らされ煙まみれで無我夢中で食べた、汚くて小さなお店、あれはどこだったんだろ?」と懐古の念にひたっていると……「飲むでしょ?」とニコニコでビールと取り皿を持って来たママが前に座ります。
「と、取り皿……?」「あ~お腹空いた。一緒に食べましょ!」
取材に来て目の前で一緒に食べ出す人は、後にも先にもこのママだけ。強烈キャラ炸裂!
肉を噛み締めながら、思わずビールが進みます。やっぱ焼肉は皆でつつくのが旨い!
6.もちろん、普通の焼肉スタイルでも
2種類の赤と緑の秘伝のモミダレは辛口と甘口。これを好みでブレンドしてツケダレとして食べると、また違う味がやってきます。
焼肉と言えばエバラかレモン汁という常識は捨てた方がいいかも。新発見@バンコク。
7.シックススインパクト~厚焼きチヂミ編~
チヂミ 小/大(130/180バーツ)
ジャパニーズ・ピザ=お好み焼きと良く耳にするが、コーリアンピザ=チヂミ?ピザ、お好み焼き、チヂミと一言で言っても実に様々な種類があるように、玄風館のチヂミは自己主張が強いチヂミ。“外はサクサク、中はモチモチ”のチヂミ。ナビはチヂミは薄いものだと思って勘違いしていました。
ボリュームも去ることながら、このツケダレ、「今後秘伝にした方がいいんじゃ?」と思うほどの絶品!
8.セブンスインパクト~チゲ(鍋料理)編~
モツ鍋(380バーツ)
じゃあモツ鍋はというと、これまた味噌でもしょうゆでもない、赤いモツ鍋。
火が入る前はスープが入っていないように見えるけど、煮えてくるとどこからやってきたのか?というくらいな真っ赤なスープが鍋を満たしていきます。
普段見慣れた鍋のメニューって、1人前でいくら、オーダーは2人前より。
写真は3人前です。とかが当たり前だと思っていたけれど、「玄風館」のは1人で食べきれない量のこれで1人前だそう……1鍋で1人前と思っていいかも。2人前を頼むと溢れるくらいで、お客さんの方が驚くんだそう。モツは丁寧に下処理がされ、まったく臭いなし。野菜たっぷり、真っ赤な唐辛子がきいていて、カプサイシンが美容にもダイエットにもよさそう。ママも目の前で凄い勢いで食べています。
サムゲタン(350バーツ)
「ダイエットによさそう!」と言う前に食べすぎかも……サムゲタンが猛烈にぶくぶく泡を立て煮えてやってきました。
若鶏の中に朝鮮人参や、ナツメ、もち米をパンパンに詰め込んで煮た薬膳料理。
KEIKOママが子供の頃、風邪をひくとおばあちゃんが作ってくれたサムゲタン。そのレシピを完全再現、風邪のひきはじめに食べれば1発だそう。
胃にやさしい控えめな味付けなので、注ぎ分けてから、各自で塩・コショウ、キムチなどで味を整えていただきます。
丸のまま入った若鶏はじっくり煮込まれていて、スプーンだけで食べられるほど。身がほろほろと崩れるし、軟骨もやわらかく、コラーゲンもカルシウムも補給できそう。
牛テールスープ(300バーツ)
コラーゲンもカルシウムの補給もいいかげん限度があると、腹が割れそうになるが、牛テールスープがママのおすすめナンバー1「他とは全然違うんだから!」と最後のトドメで出てきたので、やっぱりいただきますく(笑)。
だって、この食欲中枢を刺激する色と香りは満腹でもそそられる、それくらい良い香り。
ボコンと入ったゲンコツ級の牛テール肉はスプーンを入れた瞬間に崩れだし、なぜかほんのり甘くて牛の旨みがやさしく溶けだし、野菜が溶けきってドロドロしている、不思議に洋風のスープを彷彿させる芳醇な香り。
フォンドボーやコンソメスープに近い感覚だがそんな表現では表しきれない、未知なる複雑な味。
コムタンスープを想像してると、まったく違っていてビックリ。
煮えたぎる地獄色のスープは、色ほどそんなに辛くなく、本当凄いなんてもんじゃないコレ。まさかの最後の攻撃に完全ノックアウト。
やられっぱなしの、裏切られっぱなしの、すっかりママの「玄風館」ペースにはまってるナビ。
今度は1番最初に食べるぞ!
バンコク名物になる日も近い?!
汗だくで扇風機からやってくる煙にまみれて、古びた内装の中でいつの間にか無我夢中で食べていたナビ。見かけにこだわり、流行志向の店では絶対に味わえないこの感覚はなに?ここは『焼肉博物館』?
「また来よう、よかったバンコクに住んでて……。」そう本気で思わせる玄風館はタイにひしめく焼肉店のなかでも台風の目になりそう。
いろいろインパクトの強い、初体験づくめの焼肉屋。
「まさか旅先で日本の焼肉を食べる事になるとは……」と驚かされっぱなしの玄風館。
普段できない体験をし、食べられない物を味わうのが旅の醍醐味だとすると、「玄風館の料理と名物ママは、まさにその醍醐味を体現している」と言っても過言ではないかも。
以上バンコクナビがお伝えしました