伝統的な木造家屋をそのまま使用。タイ北部のランナー生活様式を紹介する小さな博物館。
サワッディーカー、バンコクナビです。
タイに来られたことがある方は、「ランナー」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。「ランナー」は、13世紀にタイ北部で繁栄したランナー王国から来ていて、現在でもタイ北部では大切な文化となっています。そんなランナー文化を、ランナー様式の家屋で紹介している『カムティエン ハウス 博物館』がバンコク都内のど真ん中にあるのです。さっそくお邪魔してきました!
場所は都会のど真ん中
オフィスが建ち並び、常に車で混雑しているスクムビットエリアのアソーク通りに面しています。そんな車とバイクでひしめく大通りから一歩足を踏み入れると、都会の中心地とは思えない落ち着きある庭とチーク材の高床式家屋が佇んでいます。
チェンマイから来た家屋
中国・雲南省から来たタイ・ルー族の長だったチェ王子の曾孫であるサッドさんによって、1848年にチェンマイ県のピン川岸に建てられました。博物館の名前にもなっている「カムティエン」は、このサッドさんの曾孫のカムティエンさんから来ています。カムティエンさんの孫であるクライスリ教授が、1963年にサイアムソサエティへ寄付し、1966年に博物館としてバンコクに移転されました。サイアムソサエティとは、歴史や芸術や文化などに関する研究を促進するタイ国王後援の非営利団体です。『カムティエン ハウス 博物館』は2001年に改築されましたが、もともとは160年近くも経っている、とても歴史あるランナー様式家屋なのです。
高床下
タイ伝統の高床式家屋の下にある、こじんまりとしたデスクにて入場料を支払います。大人100バーツ、学生50バーツ、子供20バーツです。
それぞれ展示物の脇にタイ・英語の説明書きがありますが、TVモニターで上映される3Dアニメショートフィルムでもランナー文化を知ることができます。
ベランダ
靴を脱いで家屋の階段を上がると、まず広々としたスペースが目に入ります。
毎夕その家の娘達は、ベランダ前に座り、糸を紡ぎながら求婚者たちを出迎えます。求婚者たちは「ピンピア」という弦楽器でラブソングを弾きながら、階段を上がってくるとか。そして娘達は気に入った相手に、お茶や噛みタバコなどをあげるそうです。とてもロマンチックですね。
「バイスリ」と呼ばれるバナナの葉で作られたもので、無くなってしまった体の生気を取り戻す儀式に使われます。、段数は社会的地位で決まっており、平民は3段、国王と王妃ともなると9段にもなります。土台部分に捧げ物として、もち米、ゆで卵、フルーツ、茶葉、ビンロウの実、ココナッツミルク、水などが入れられます。
ベッドルーム
薄暗い室内は、スピリチュアルな雰囲気を感じます。これも160年という年月の重みでしょうか。展示品からは、宗教信仰や儀式がどれだけランナーの人々の生活に密着していたのかを知ることができます。
ベッドルームの扉の上には、見事な彫刻の木製プレートが飾られています。家を災難から守ると信じられています。
蜜蝋から作られたろうそくです。呪文が描かれた桑の紙を巻いて、それを護符としてろうそくの中に入れてあります。
狩りや戦でよく移動することの多い男性たちは、呪文が描かれたシャツを身に着けていました。これが武器や邪悪な動物による攻撃から、身を守ってくれると信じられていたそうです。また、良い商売や恋まで引き寄せてくれるとか。
呪文の描かれた白い布は家の繁盛を祈願し、赤い布は危難や障害から守るものです。今でもタイ北部にあるお寺で、これらの布を目にすることができます。呪文を描く顔料は鉱石と植物で作られますが、動物の胆汁も加えることでより効果があると信じられています。普段は仏壇に飾っておきますが、出掛ける際には折りたたんで身に着けておくこともできます。
真鍮製か銅製か銀製のプレートに魔術図を彫ります。火事や盗難などの災難や悪魔除けのためだそうです。またその逆に、富や成功を呼び寄せます。
ランナー女性が身に着けるジュエリーの数々です。普段使いのものから、お祭りなど特別な時にしか身に着けないものもあります。ジュエリーは富を象徴だけでなく、どの民族に属しているのかを見せる役割も果たしているそうです。
ランナー家屋の主は女性で、母から末娘へと受け継がれていきました。これは今でも続いてる伝統です。そのためこの『カムティエン ハウス 博物館』も、女性の世代に受け継がれてきたのです。
ランナー家屋の中で一番大切なスペースは、亡くなった祖父母を崇拝する祭壇です。先祖を敬う文化のある日本と似ていて、親しみを感じますね。
マットレス、シーツ、ブランケット、蚊帳、枕のベッドセットを作ることで、女性の裁縫技術がテストされました。織物・裁縫の能力で、社会的地位が決まり、結婚時にもその能力と容姿がチェックされたとのこと。
台所
ステンレスもプラスチックもない、自然のものだけが置かれている伝統的な台所です。煤で汚れた釜や本物の野菜などが、「日頃ここで誰か料理しているのでは?」と想像させてくれます。
ここでは、ランナーの伝統衣装をまとったチャンパお婆ちゃんによる「蛙カレー」の作り方をTVモニターで見ることができます。
穀倉
ランナーの人々にとって穀倉は自分達の富を象徴し、たいてい家の前に建てられました。今では台所から橋のような細い渡り廊下と穀倉が繋がっていますが、伝統的には不吉とされ、通常は梯子が唯一の入り口になるそうです。
農作業やそれを支える儀式で使われる道具などが展示されています。米を脱穀する前もしくは貯蔵する前には、その過程で無くなった米の生気を呼び戻すために儀式を行なうそうです。
米倉の周りにも廊下があり一周できますが、低く細い廊下ですので体の大きい方はご注意ください!
行き方
地下鉄スクムビット(Sukhumvit)駅の1番出口から出て、そのまま真っ直ぐ行きます。左手角の「カフェ ネロ」というカフェレストランの隣にあるピンク色のフェンス内の奥に博物館があります。