タイの一般家庭へホームステイ体験

   タイのごく普通の家庭で育ったごく普通の女の子は、どんな暮らしをしているの?観光地巡り・お客様扱い一切ナシ! ナビの、バンコクゆるゆるホームステイ!

サワッディーカー!バンコクナビです。
『バンコク』という街に対して、みなさんはどんなイメージを持っていますか? “観光都市”“買い物天国”“眠らない街”と、様々な異名を持つバンコク。でもそんな中にあって、一般のバンコク市民は、浮かれることなくそれぞれの生活を営んでいるはず。 じゃぁそれはどんなものなんだろう?という興味を抱いたナビ。
街に溢れる観光客やスパや高級ホテルの隙間をぬってゆるやかに流れる、バンコクの普通の女の子の日常生活をのぞいてみました。

■ 1日目

シバポーンさん、通称シーちゃんは、24歳。バンコクで生まれ、バンコクの大学を卒業し、現在バンコク市内のとある旅行会社で働く、生粋のバンコクっ子です。大学で日本語を専攻していたというだけあって、日本語の読み書きの能力はかなりのもの。
今日は土曜日、明日は休み。午後7時前に仕事を終えて、さぁ、どこに遊びに行こうかなぁ~?
迷った末、会社にぼど近いルンピニ公園のスワンルムナイトバザールで散歩がてら買い物することに。アンコールワット調の門の前で、パチリ。
8時前。いつもはバスに乗って家まで帰りますが、この日は、「歩き疲れちゃったね…」と、タクシーで帰宅。人の良い運転手さんが、生まれ故郷の自慢をしてくるのを、にこにこと聞くシーちゃん。
家に着いたのは9時前。家族はもうみんな寝静まっています。お母さんが用意してくれていた夕食は、あんかけ麺。自分で温めなおしてお皿に盛ります。そしてデザートは、もち米とマンゴーをココナッツミルクで食べる、“カオニャオマムアン”というスイーツ。シーちゃんの大好物です。ナビ新発見!タイの人は、果物の皮をむく時、包丁を手前から向こうへ動かすんですね!
これが、シーちゃんの部屋。ベッドの脇に、ぬいぐるみがあるところが、さすが女の子。廊下の壁には、家族で撮った記念写真が、パネルに入れて飾られています。
涼みがてら、すぐ近くの夜の公園で、ブランコに揺られながらお喋り。話題は自然と恋の話に。
「シーちゃんって、好きな子いるの?」 「いないよー」 「ほんとにー?ナビはいるよー」
「えー!どんな人―?」 「ひみつー!」
11時過ぎ、家に戻って、お風呂に入って、「お休みなさーい」 タイの家庭では、湯船はなく、シャワーとトイレが一緒になっているのが普通です。タイ人はきれい好きで、朝と夜、1日2回シャワーを浴びて汗を流します。

■ 2日目

翌朝。日曜の朝だからといって、朝寝坊はできません。なぜなら、早朝に托鉢にやってくるお坊様たちに食べ物やお金を喜捨するから。上座仏教を信仰するタイの人々は、『因果応報(良い行為には良い結果、悪い行為には悪い結果)』の考えを強く信じていて、将来、ひいては来世をより良いものにするため一生懸命、喜捨をはじめとする善行を積みます。シーちゃん一家は、特に敬虔な仏教徒。家の中にこんなに立派な仏間があるのは、タイ人の中でも珍しいそうです。
お父さん・お母さんは、4時半に起きて、おかずを作って準備をしていたんだそう。どおりで、昨夜寝るのが早かったわけですね。「托鉢」は、タイ語で『ビンタバート』と言います。『ビンタバード』で喜捨するのは、各家庭によっても異なりますが、大体、ご飯・おかず・水・花・お金のセット。準備を整えて、お父さん、おばぁちゃんと一緒に、お坊様がお通りになる家の近くの道路へ出ます。
まずは年長のおばあちゃんから、食べ物、お金、花の順でお坊様が抱えている鉢に入れ、合唱をしてお経を唱えてもらいます。そしてナビも、見よう見真似で後に続きます。托鉢にやってくるお坊様は、「清貧」の戒律に従って、裸足。施す立場である在家者側も、お坊様の優位に立たぬように、履き物を脱いで、はだしで臨みます。日ごろ仏教徒であることをあまり自覚することのないナビですが、お坊さまに合唱しながら『解脱を目指し修行に励むお坊さまに食を提供したんだ』という、何とも言えない充足感に包まれました。
バンコクの中心部から車で約30分、チャオプヤラー川沿いにあるシーちゃんの家は、3階建て。もともと、ここからさらに車で20分ぐらいの郊外に住んで居たシーちゃん一家ですが、交通の便などを考えて、3年前思い切って新築を購入し、引っ越してきたんだそうです。
タイ人は愛国心がとても強く、現プミポン国王は、全国民に尊敬され愛される存在。大抵のタイ人の家の壁には、若かりし頃、出家時代、即位後など、様々なバージョーンの国王の写真が掲げられています。シーちゃん一家もその例外ではなく、さらに車には、「ラック・ナイルワン(We love国王)」と書かれたシールが貼られていました。
家に戻って、朝ごはんを食べます。今日のメニューは、サンドイッチ。具は、「ムーヨーン」という、豚肉を繊維だけになるまで甘辛く煮詰めたもの…。タイではいたってポピュラーなメニューですが、ナビにとっては食パンに佃煮をはさんで食べている感覚で、ちょっと苦手…。
それはさておき、食卓を囲んでの一家団欒。ふと思いついて、シーちゃんの名前の由来を聞いてみたナビ。本名の『シバポーン』は、ヒンドゥー神の“シヴァ”から、ニックネームの『シー』は海の“Sea”から取ったのだそう。シーちゃんの名前には、シヴァ神のように勇敢で、海のように広い心を持って欲しい、という、お父さんお母さんの願いが込められているのです。
タイではこのように、生まれたときに本名とニックネームの2つの名付けをし、普段の生活は、殆ど通称で通します。だから、とても仲がいいのに本名を知らない、という面白いことも起こってしまいます。
お腹が落ちついたら、朝刊タイム。シーちゃんの家では、タイ国内トップの売り上げ部数を誇る『タイラット』誌ではなく、ちょっぴり経済よりの『TODAY』をとっています。
お父さんいはく、「タイラットは、関心を集めるために、殺人現場などプライバシーの微塵もない写真を載せるから読まない」のだそう。
占い好きのタイ人の女の子。シーちゃんも、さっそく星座占いのページを開いて、「恋愛運はまぁまぁ」「無駄使いに注意だって!」と一喜一憂。
しばしの休憩の後、15分ほど歩いたところにある市場へ買い物へ出かけます。途中には、ナビの目には新鮮に映る、タイらしい造りの家がありました。
市場では、色んな野菜や果物、魚、お祈り用の花などが所狭しと並び、活気にあふれていました。お坊様の姿も。
シーちゃんが足を止めたのは、「タオフワイナムキン」という、しょうがシロップに豆腐を浮かべたものを売るお店。ここでシーちゃん、みんなの分、5袋を購入。1袋6バーツです。このお店では豆乳も一緒に売っていて、こちらは1袋4バーツ、寒天や大麦などの具を入れると5バーツです。
市場の入り口で待ち合わせていたお父さんたちと合流し、帰りはトゥクトゥでらくらく。5分程度で、20バーツでした。
家に戻ると、もうお昼どき。空心菜のレッドカレーや青菜と厚揚げの煮物、しゅうまいなどのおかずを蒸し器で温めて、ご飯の準備ができました。
おかずの余りは、蚊帳のようなネットをかぶせたり、棚にしまったりします。この棚、蟻が上ってこないよう、足の部分に水を張れるように一工夫されています。南国タイならではのアイデアですね。
シーちゃんとナビは、「後でいいー!」とさっき買ってきたナムフワイキンを食べながら、インターネットで遊びます。シーちゃんは、今タイで流行っている曲をダウンロードして、歌詞の意味を日本語で教えてくれました。それにしてもタイの歌って、恋愛に関するものばかり!
やっと2人のお腹が空いたころには、おかずはすでに無くなっていました…。そこで、お母さんが「カノムチーン・サーオナーム」という麺料理を作ってくれることに。ナビとシーちゃんも、干しえびを石臼ですりつぶしたりして、支度のお手伝い。てきぱきと準備を進めていく、料理上手のお母さん。タイ料理に、唐辛子は欠かせません。でも唐辛子を切ると涙が…。タイでは、台所のお母さんを泣かせるのは、タマネギではなく、唐辛子。他にもココナッツミルクやパイナップルなど、タイらしい素材のオンパレードに、どんな味なんだろう?とナビはもうわくわく。
食事の準備が整い、「いただきまーす!」 
お米でできたそうめんのような麺に、ココナツミルクのスープ(今日の具はソーセージ)をかけて食べます。トッピングは、パイナップル・すりつぶした干しえび・ライム・にんにくスライス・唐辛子をお好みで。
この「カノムチーン・サーオナーム」は、特に暑くて食欲がないときによく作る料理なのだそう。そこも日本のそうめんと似てますね。食べてみると、ココナツミルクのこくとエビの香ばしさに、ライムの酸味がすっきりと効いてすごくおいしくて、“食欲の無いときに食べる料理”を、2回もおかわりしたナビ。甘酸っぱい味が大好きなシーちゃんは、パイナップルをわんさか入れていました。
食後は、テレビを見たりして、みんな思い思いにくつろぎタイムを過ごします。

さて、ナビのゆるゆるホームステイはこれにて終了です。
「特別なことはしなかった」はずなのに、思い返してみると、托鉢をしたこと、市場に行ったこと、食事のお手伝いでさえ、バンコクの中心部しか知らなかった日本人のナビにとっては新鮮な体験でした。
タイの基盤となっているのは、シーちゃんファミリーのような、仏教を信じ、国王を敬い、それを日常生活の中で実践している人たちなんだということが分かって、タイという国がもっと好きになった、ナビのホームステイ体験でした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2006-08-11

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